Y.陸上競技でよく起こる障害・外傷・疾病

※ 陸上競技の練習や試合中に怪我を起こす場合があります。怪我をした場合は専門のスポーツ整形外科などの診察をすぐうける必要があります。

○脚のすね(けい骨)の痛み

・症状

シーズンの初めや新入生がスパイクを履き始めた時ある痛みで、すねの内側の骨〔下から1/3付近〕を押すと痛みがある。ひどくなるとジョッグもできなくなる。

・予想されるけがの種類

けい骨の疲労性骨膜炎(シンスプリント)症状が長引く場合はけい骨の疲労性骨折の可能性があります。

・原因

練習のし過ぎや疲労の蓄積、脚筋力の不足、硬い所での練習のし過ぎ、クッションの悪いシューズの使用、下肢部のストレッチ不足。

・処置

疲労が原因なので「治療」は初期が肝心。練習量を減らすか、練習を中断し、アイシング(氷などで冷却)、温冷交代浴(冷却と加温を交互にくり返す)、テーピング、消炎軟膏の塗布、ふくらはぎのマッサージなどを行う。

・予防方法

正しいウォーミングアップ、クールダウン、練習後のマッサージ、硬い走路(コンクリート)での練習を避けるか、クッションのよいシューズを履くなど。

○足の甲の痛み

・症状

走ると足の甲が痛み、患部に少し腫れが有り、押すと痛む。

・予想されるけがの種類

中足骨の疲労性骨折

・原因

練習のし過ぎ(普通の骨折は、急激な外力が加わり起こるものだが、疲労骨折は比較的小さな外力が慢性的に繰り返されることによって起こる。)

・処置

安静を保つ。アイシング(氷などで冷却)消炎軟膏(サロメチール、ラブなど)の塗布なども有効。

・予防方法

頚骨の疲労性骨膜炎と同じ。

○大腿部裏側(前側)の痛み

・症状

短距離疾走中の大腿屈筋群(ハムストリング・太もも裏側)、跳躍で大腿四頭筋(太もも前側)長距離で下腿三頭筋(ふくらはぎ)で起こることがある。春先の涼しい時やウォーミングアップ不足、短距離で急激にスピードを上げたり、跳躍で踏切の瞬間などの起こる。激しい痛みと患部に強い違和感、圧痛、伸縮痛、伸展痛、皮下出血、腫れ。

・予想されるけがの種類

肉離れ(筋断裂)

・原因

ウォーミングアップ不足、筋肉が冷えてしまった。筋疲労、筋力のアンバランス。

・処置

直ちに運動を中止し、損傷部に生じる内出血、腫脹を最少限にするために手早くICE処置(I・冷やす、C・伸縮包帯などで圧迫する、E・挙上)を行う。つったと思いマッサージなどは行わない。

・予防方法

ウォーミングアップをしっかり行い、ストレッチを十分行い、体を冷やさない。柔軟性を高める。

○アキレス腱の痛み

・症状

走るとアキレス腱部分が痛み、特に地面を蹴るときにひどく痛む。症状が進むと患部が腫れる。

・予想されるけがの種類

アキレス腱・周囲の炎症

・原因

ランニング、ジャンプなどの繰り返しによってアキレス腱に過度の負担がかかった場合。硬い走路で走った。

・処置

RICE処置(R・安静にする、I・冷やす、C・伸縮包帯などで圧迫する、E・挙上)を行う。

・予防方法

ウォーミングアップをしっかり行い、ストレッチを十分行う、安定性のあるシューズを履く。

○膝のお皿(膝蓋骨)周辺の痛み

・症状

走ると、膝のお皿(膝蓋骨)周辺が痛む。特に膝の前方部。

・予想されるけがの種類

膝蓋骨軟化症(ランナー膝)

・原因

大腿四頭筋の筋力や柔軟性が乏しいかった場合など膝蓋骨の裏側の軟骨が痛んでしまった。

・処置

RICE処置及びストレッチ。

・予防方法

大腿四頭筋のストレッチを十分行う、硬い走路やアップダウンのある所はでは走らない。

○膝のお皿(膝蓋骨)の上端、又は下端周辺の痛み

・症状

ジャンプしたりすると膝蓋骨の上端、又は下端に軽い痛みを感じる。また、患部を押すと痛い。

・予想されるけがの種類

膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)

・原因

ジャンプやランニングなど繰り返しによってショックをを吸収する膝伸展機構の腱部に負担がかかり、筋や腱が炎症、小さな断裂を起こした。

・処置

RICE処置及びストレッチ。

・予防方法

大腿四頭筋のストレッチ、大腿四頭筋を中心とする筋力強化。練習後の患部のアイシング。

○膝のお皿(膝蓋骨)の下部の痛み

・症状

膝の下の部分が運動すると痛みを感じる。骨が出っ張って来たり、患部を押すとひどく痛む。男子に多く、正座などができなくなる。

・予想されるけがの種類

成長痛(オスグッド・シュラッテル病)

・原因

急激な骨の成長のため、筋腱の成長が追いつかないために起こる。大腿部にある大腿四頭筋(太もも)が脚の成長期で弱い成長帯を引っ張り、炎症を起こしている。時には、骨片が剥離することもある。

・処置

RICE処置及びストレッチ。

・予防方法

大腿四頭筋のストレッチ、練習後の患部のアイシング。

※膝の痛みには、その他に鵞足炎(ガソクエン)、腸けい靭帯炎、半月板損傷、また、腰痛症(脊椎分離症・すべり症・ヘルニア・座骨神経痛など)があり、痛みを感じたら早めに専門医に診てもらうことが大切です。

○マメ(水泡)

・原因

皮膚が繰り返し擦り合わさったために体液がたまった物

・処置

患部をよく消毒し、十分に消毒した針で体液を抜く。皮は剥いだりせず、滅菌ガーゼなど覆います。その上からテーピングテープなど固定する。

・予防方法

足にできる場合が多いので足に合ったシューズを選ぶ。(シューズは必ずひもを通し、左右、練習で使用する靴下を履き、午後購入する。)

○急にめまいがしたり、頭痛を訴えた場合

・症状

めまいがする、手足がしびれる、頭痛がする、冷や汗をかく、顔面が蒼白になる、慢性の場合は、記録が極端に低下する。比較的女子の長距離選手に多い。

・予想される疾病の種類

鉄欠乏性貧血

・原因

鉄分がトレーニング中の汗で失われる、足の底の血管が衝撃(走ることによって体重の数倍の衝撃がかかる)によって血管内溶血が起き尿中に失われる、消化管内出血、女子は生理による出血などが考えられる。

・処置

安静を保ち、気道を確保する。(あごをあげ、呼吸が楽になるようにする。)足を高くして寝かせる。衣服などゆるめる。

・予防方法

栄養に注意し、鉄分等を補給する。また、専門医に診察をうけ、自己管理(目の下瞼の赤味)に注意する。

○暑熱環境下で練習中に、めまいがしたり、頭痛、吐き気を訴えた

・症状

暑熱環境下で練習をした時、大量に汗をかいた後に、めまいや、手足のしびれ、痙攣、顔面蒼白、頭痛、吐き気、意識障害がおこる。

・予想される疾病の種類

熱中症(熱疲労、熱射病)

・原因

体温の上昇のため中枢神経に異常をきたした(熱射病)大量に汗をかいたために血液中の塩分濃度が低下した(熱疲労)

・処置

涼しい所に運び、衣服をゆるめ、水分(生理食塩水)を補給。時には身体を冷やす。

・予防方法

高温多湿での練習を避ける。(夏の暑い時間帯)水分の補給を行う。発汗性のある薄着で練習をし、帽子で後頭部などを暖めない。

○中・長距離のレースや練習後に呼吸が速くなり、手足がしびれる。

・症状

突発的に起こり、過呼吸、息切れ、動悸、めまい、頭痛、目のかすみ手足のしびれ、痙攣、口周辺のしびれ感など

・予想される疾病の種類

過換気症候群

・原因

換気の代謝要求を上まる呼吸が突発的に起こり、不安や緊張など心理的な要素が加わり起こる。

・処置

ある程度の大きさの袋を鼻及び口にあてがい、呼気を吸入させ、患者の不安や緊張を解く。