N.T先生編
走幅跳
踏切動作について。
踏切は高い助走速度をなるべく保った状態で身体を空中に運ぶための最終動作と考えます。
多くの中高生の走幅跳を目にすると感じる事が2点あります。1、踏切前で減速をおこしている事。2、踏切板に力を与えて跳ぼうとしている意識。それによりもっと遠くへ跳べる身体能力を持っているにも関わらず現状の記録に留まっている選手が沢山いるように思われます。
1、踏切前での減速の考えられる原因
踏切何歩前からの体の硬直がおきるから。→なぜか?今まで踏み切り動作の意識として最後の3〜5歩位のスピードアップや、タッタッターンと素早く動くなどという指導が多く見られていました。実際トップアスリートの動作を外から見るとそのように見えます。しかし実際にそれを意識しておこなうと身体の硬さを生み、素早い動きは逆にできなくなると感じます。もちろんそのような指導を受けて記録が飛躍的に伸びる選手はいますが、そのような選手はもともと柔らかい動作ができる選手だと思います。多くの選手はもともと硬直しやすい身体で、更に最後の動きを早くすることを行い身体の硬直状態をより強くさせ、結果的にスピードダウンにつながっていると考えられます。
2、踏切板に力を与えて跳ぼうとしている意識の原因
おそらくほとんどの人が走幅跳を初めて行う時は体育の授業が多いと思われます。
体育の授業では遠くへ跳ぶ事はもちろん、踏切板を越えないルールの中で行なわれます。この時踏切板を意識した「走幅跳」になるのですが、踏切板を越えてはいけない事で踏切板に対する意識が強くなっているのではないかと考えます。
実際遠くへ跳ぶ事だけを考えた時に、踏切場所をたたく動作や地面を強く蹴って反発をもらうなどの考えや動作はおきないと考えます。バスケットリングに触ろうとしたり高鉄棒に跳びつこうとする時の動きの時に意識は踏切足にあるのではなく、跳びつく先にあると思います。競技としての走幅跳では遠くに跳ぶ事の意識はそこに置くべきで、踏切板に足が合う事は正確な走り方習得後に反復練習で習得していく事だと思います。
では、私の踏切のポイントを説明します。
1、リラックス(脱力)した状態での高いスピードの維持。
2、身体を動かすポイントが身体の中心からの動き出しになっている
3、ランニング状態(助走時)では骨盤の前傾がされている
4、踏切る瞬間に前傾した骨盤が垂直状態になる
5、リラックス(脱力)した身体を瞬間的に引き上げる筋力の柔らかさくるスピードがある
6、踏切だけ意識するのではなく全体の流れからくる踏切になっている
以上が私の見るポイントです。
良いジャンパーは特に意識をしなくて走力を上げるだけで記録が伸びます。良い選手の特徴は上記の事が自然に出来ている選手が多いです。特に骨盤の前傾に近い垂直な状態が初めから保たれていると感じます。
次に上記の内容を競技者側から見たときの私なりの練習意識(感覚)と試合意識(感覚)に別けて説明します。
(練習意識)
良い動作を習得するために、初め意識を1ヶ所に置く(ポイント練習)。ポイントを反復練習によりリラックスした状態で意識をおかなくても自然に動作が出てくるようにしていく。低速度から徐々に速度をあげていく。最終的に全助走の時に無意識でも出てくる動作となるように練習をしていく。
まずランニング状態(助走)で、骨盤を前傾できている事が前提とする。
踏切る瞬間に、踏切り足側の骨盤部分に意識を置く。→「きをつけ!」「やすめ!」の動作の「やすめ」の時に手を当てる時の、腰前の骨辺りから少し内側あたり。
前傾している骨盤を垂直状態にする。私は左足踏切りなので、左側の骨盤を真上に戻す感覚で行なっている。
注意することは骨盤への意識が強すぎて身体が硬くなると骨盤後傾してしまう(反ってしまう)。動作方法を身体にインプットできたらリラックスの中で出来るまで反復練習する。
上記動作が身体のリラックスできた状態で行なえると、脳にも余裕がうまれる。
次に、前傾→垂直からうまれる感覚は踵からつま先へ体重が移動する感覚がわかってくる。
私は踵からつま先に抜けるという感覚で表現している。
次に踵からつま先に抜ける瞬間に身体を引き上げる。引き上げるということは脱力していないと絶対に出来ない。腰から背中、肩、引き上げ足を使って瞬間的身体を引き上げる。動作のスピードを例えると人にびっくりさせられた時に身体の筋肉が「ビクッ」と引き上がるくらいの速さに近いだろう。(これはそのように行なう意識ではなく例えであるが。)リラックス(脱力)できるとそのような素早いスピードのある動作ができる。初めは意識して引き上げるが、反復練習で踏切る=引き上げを身体にインプットし自然にできるようにする。
私は腰上部から肩甲骨を「スッ」と引き上げるイメージでおこなう。
引き上げ動作で注意することは、リード足(引き上げ側の足)は結果的に地面と水平くらいに引き上がらなくてはいけないが、意識を置きすぎると、身体の硬直や、全体の流れを止める事がある。跳び出す方向に意識を置き、走ってきた事を跳ぶ事に切り替える時にリラックスできた自然の流れの中から動作されることが良い。
練習方法
1、JOG程度のランニングでおこなう骨盤を垂直へ戻す練習
上手く出来ると身体が真っ直ぐなり、気持ちよく身体を引き上げたい感覚になる。
2、踵からつま先に抜ける感覚をつかむギャロップ動作。
3、ギャロップ動作からの身体の引き上げ意識
4、3番からの砂場へ着地。
5、短助走跳躍
6、中助走跳躍
短中助走跳躍を行なう時に本数前半はポイント動作に意識を置き、本数後半は全体の流れを大切にする。
7、高鉄棒引き上げ練習
高鉄棒から2Mくらい離れた所からジャンプし鉄棒にぶら下がるイメージでおこなう
バスケットリングでもよい
(試合意識)
試合のときに最後の踏切りの瞬間はあっというまです。早いです。この1秒にも満たない瞬間動作の中で骨盤の意識や、踵から抜ける意識を持ち、考えて動作が間に合うでしょうか?考える事で動作が遅れるのではないでしょうか。
その瞬間の動きは練習意識を反復で行なう事で身につけ実際の試合ではリラックスや、全体の流れ、無心状態で望むほうが良いと思います。
試合中は身体をゆるめる事。筋肉や動作の硬さを取る事。踏切り動作で言えば踏切り前のスピードを落とさないため3歩、5歩前のスピードアップの意識はしない。
実際の跳躍の時に骨盤の前傾〜垂直にする意識は持たない。その意識確認はウォーミングアップやピット練習時間で行なう。
良い方向に跳びだすための、引き上げる動作を自然に行なうためには、身体のリラックス(脱力)をしておくことが大切になる。
以上内容が私の踏切りに対する考えと意識になります。