T.M先生編

「より遠くへ跳ぶために」。これが、走り幅跳びの最大の目的になります。そのための一つの要素として「踏み切り」という動作が必要になってくるわけです。この動作(動き方)は「走り」の動作とは違います(※地面から力をもらうという点では一緒ですが)。「走り」の動作では身体を斜め前方向に浮かせることは出来ません。しかも、助走のスピードも生かしてより遠くへ着地したいと考えると、大きく二つの技術を身につけなけらばならないと思います。一つは「身体を浮かす技術」であり、もう一つは「走る動作から踏み切り動作への切りかえ技術」であると考えます。ここではこの技術を段階別に解説し、その練習方法を紹介していきます。

ステップ@ 軸をつくって身体を弾ませよう!「身体を浮かす技術@」

 同じジャンプでもスポーツテスト等でおこなわれる垂直跳びとステップ@のジャンプは意味が違います。垂直跳びは、屈伸して脚力を利用してのジャンプ。ここでおこなうジャンプは地面に自分の体重を加え、その反発で自分の身体を弾ませるジャンプのことをいいます。もちろん、走り幅跳びに必要なのは、後者のほうなので勘違いしないでください。ここで勘違いすると、ももやふくらはぎの筋肉をつければジャンプ力がつくなんて勘違いをしてしますのです。ジャンプ力をつけたければ、地面からの反発をいかに上手にもらうかをひたすら練習してみよう。

 ではまず始めに、反発を身体で受け止めるために重要な姿勢づくりから………

 頭のてっぺんから足の裏まで自分の身体が一本の棒になったように身体をまっすぐにピッしてみよう(簡単にいうと、胸を張って、前を向いて姿勢をよくする)。この時、足下ばかり気にしていると、姿勢が崩れてしまうので注意しましょう。  



正しい姿勢の画像@

 siseiyosi.jpg

 

ダメな姿勢の画像A  

 siseiwaru.jpg

 骨盤の前傾・後傾kosi.gif

  正しい姿勢ができたら、ちょっとさらにちょっと姿勢を修正。骨盤の前傾の仕方を覚えましょう。正しい姿勢から膝を曲げてみましょう。このとき、骨盤が後傾していると、背中が丸まり、腰が抜けた姿勢になってしまいます。足の付け根をしっかり曲げて膝を曲げると、骨盤が前傾し、腰が入った姿勢がとれます。

正しい姿勢ができたら、いよいよジャンプ!

 効果音でいうとイメージは「ボヨ〜ン、ボヨ〜ン」って感じです。もう少し強い踏み切りになると「バコーン」ぐらいでしょうか。自分の身体がゴムになり、バネになるわけです。  「ボヨ〜ン」と言う言葉は実に意味深い言葉になります。 「ボ」の部分で力をためて、 「ヨ」でジャンプ、 「〜」が滞空時間、(この滞空時間が長ければ長いほど気持ちよくなります) 「ン」で着地になります。  また、「ボヨ〜ン」の中には、筋肉のゆるんで♪しめて♪の動きが入っています。この強弱が上手につけられるようになると、どんどん身体がバネみたいになって弾んでくるのです。

この感覚を得るための練習

@両足で真上にジャンプ …その場で両足ジャンプをしてみよう。まず重要なのが地面への「接地」の仕方。接地はつま先から入りがちですが、できるだけ足の裏全体で地面をとらえるようにしましょう。そして、なるべくひざが曲がらないように注意しましょう。次に腕の使い方をちょっと工夫してみましょう。足裏が地面に接地するときに後ろから前へタイミングを合わせて大きく腕を振ってみましょう。ひじを曲げたり、伸ばしたり、色々なパターンでおこなうとよりよいタイミングがつかめてきます。

Aミニハードル等を利用して両足ジャンプ …@と同じ要領で今度は並べたミニハードルを飛び越えていきます。ミニハードルの高さはできるだけ低い方が良いでしょう。ジャンプしながら前方方向へ移動するので、軸が若干前方向に傾けます。この時もひざや腰がなるべく曲がらないように意識しましょう(軸を崩さない)。

Bスキップジャンプ …身体に一本筋がとおり、反発で身体が浮くようになってきたら、片足で身体を浮かせる練習をしましょう。片足でその感覚をつかむにはスキップの動きが効果的です。 接地の仕方は@でおこなったときと同じように、足裏全体で地面をとらえます(かかとから入るイメージでもよい)。ここで重要なことはあくまで地面からの反発をもらうということです。ですから、自分から足首を返して、ひっかくような動きはしないでください。あとは、三回に一回とか、四回に一回とか、強弱とつけてスキップをします。あまり前に移動しないで、なるべく上方向へ反発をもらいジャンプしましょう。  

※その他にもいろいろなバリエーションで身体を弾ます練習はできると思います。選手は暇さえあれば、跳びはねて、いろいろな感覚を身につけましょう。

ステップA 「踏み切り型を覚えよう」「身体を浮かす技術A」

 ここでは踏み切る時の姿勢と、その姿勢になるまでの身体の動かし方(動作の流れ)を確認します。今までの踏み切りの型は、踏み切りの後半部分の型(リードレッグのひざを高く上げて、踏み切り足は踏み切り板を蹴りきる)を強く協調してイメージしてましたが、ここでは、足が地面に接地する瞬間の型をつくっていきましょう。今までのイメージが悪いというわけではありませんが、その型は結果としてそういう型になるだけで意識して作るものではないというのが私の考えです。下の図を参考に考えてみてください。                   

@今までのイメージ

humikiri2.gif

A意識したいイメージ

humikiri1.gif

画像Aのように身体に軸ができ、的確に地面をとらえることができる接地の仕方を覚えれば、自然と画像@のような形に身体が動く。今までのイメージは地面を的確にとらえたことによっておきた結果なのです。

 この感覚を得るための練習  

@その場でのイメージ練習…踏み切る一歩前の動きから、脚を踏み出してみましょう。この時、かかとの奇跡は走るみたいに円を描くような動きではなく、踏み切り脚の膝から下が素早く前に出て、素早くかかとから地面をとらえます。かかとを地面においた時、踏み切り脚の膝や腰が曲がらないように意識しましょう。踏み切り脚に重心を乗せてあげるためには、骨盤を前傾させ、重心を高い位置から設置した場所に乗せてみましょう。

A歩行からの型づくり…@の練習である程度のイメージが出来たら、次に歩行から踏み切りの型までやってみましょう。歩行で前に移動する分、重心が軸足に乗せやすくなるはずです。接地する一歩前で若干重心が落ちますが、意識して行うとかえっておかしくなるので、踏み切り脚を地面に置く前に脱力するようなイメージでやってみましょう。

B歩行からの踏み切り …A動作までイメージできたら、いよいよ踏み切ります。この時、強く踏み切ろう!とか高く跳ぼう!という意識は必要ありません。それよりもタイミングを重視して、リラックスした中でやってみましょう。慣れてきたら徐々に歩くスピードを速くしていきましょう。

ステップB 「走り〜踏み切りまでの流れをつかもう」

「走る動作から踏み切り動作への切りかえ技術」

 いよいよ踏み切りの核心部になります。この技術をどう身につけるかが記録向上の鍵になりますが、この技術はものすごく感覚的で繊細なものです。ちょっとした感覚のずれやその日の体調等で前日とは別人のような動きになることもあるので、日々の練習のなかで自分の感覚や体調をしっかり整えて練習に望みましょう。

人間のバネ!?……

 「バネがある」の「バネ」って何だと思いますか?みなさんは筋肉の量や弾力性が関係あるのではないかと容易に想像がつくかと思います。確かに、骨と皮だけの脚ではジャンプ力もそれほどないでしょう、筋肉の弾力性も大いに関係あると思います。だからといってボディービルダーのように筋肉をモリモリにつけてもジャンプ力が増すとも思えません。何年か前の研修会でこんな話を聞きました。「いわゆるバネというものは腱の柔軟性が関係ある」と言うのです。しかも「筋肉をつけるようなトレーニングばかりしているとその柔軟性がなくなってくる」というのです。もしこの話が本当だとするとトレーニングすればするほどバネがなくなるということになるのです。ここで重要なのがストレッチです。ストレッチは筋肉の疲労を取るためにとても大切ですが、バネをなくさないようにするためにも重要だということです。みなさんも普段のストレッチをもっと大事にしていきましょう。

前のページに戻る